【リウマチ】関節リウマチと心臓の健康 ― 最新メタ解析から見えてきたリスク管理の重要性
全身性免疫介在性疾患(Systemic Immune-Mediated Diseases, SIDs)をご存知でしょうか。関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE、いわゆるループス)、血管炎症候群(例:多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉)など、自己免疫や自己炎症によって全身に炎症が及ぶ疾患の総称です。これらの疾患は関節や皮膚など 身体の様々な部分に症状 を引き起こしますが、それだけではありません。近年の研究で、こうしたSIDsを持つ患者さんは心臓や血管の病気(心血管疾患)による合併症や死亡リスクが高いことが明らかになってきました。今回は、米国予防心臓病学誌(American Journal of Preventive Cardiology)に2025年に掲載された最新のメタアナリシス論文「全身性免疫介在性疾患における心血管死のリスク:系統的レビューとメタ解析」の内容を、一般の方向けにわかりやすく丁寧に解説します。この大規模解析から見えてきた SIDsと心血管死リスクの関係、そして特にリスクの高い疾患や患者層、主な原因となる心臓のトラブル、さらに今後の予防やケアの重要性について、一緒に見ていきましょう。
■SIDsは心血管死リスクを26%も高める ─ メタ分析が示した事実
まず注目すべきは、最新のメタ解析が示した 全身性免疫介在性疾患(SIDs)全体としての心血管死リスクの上昇 です。この解析には 39件の観察研究、延べ17万人以上の患者 のデータが含まれており、結果は信頼できるものとなっています。統合解析の結果、SIDs患者では心血管疾患による死亡リスクが約1.26倍(+26%) に有意に上昇することが報告されました。このリスク上昇は解析手法や対象集団を変えて行った感度分析でも一貫して認められ、頑健な所見といえます。
解析対象となった様々な自己免疫疾患の中でも、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の3つの疾患では、心血管死リスクの上昇が 統計的にも有意 に認められました。SLEではリスクが約3倍にも及び、GPAやRAでもそれぞれ1.5倍前後と、他の疾患より明確にリスクが高かったのです。一方で、解析に含まれた他の免疫疾患(例えば、乾癬〔尋常性乾癬〕や炎症性腸疾患など)は統計上明確なリスク上昇とはならず、心血管死リスクとの関連が強い疾患は限定的であることも示唆されました。このようにSIDs全体で見ると平均26%のリスク増ですが、疾患によってばらつきがあり、特にSLEやRAなど一部の疾患で突出してリスクが高いことがわかります。実はこの知見は他の大型研究とも一致しています。例えば2022年に英国の約2,200万人を解析した研究では、対象とした19種類すべての自己免疫疾患で心血管疾患の発症リスクが1.5~3.5倍に増加することが示されました。中でも全身性硬化症(強皮症)やSLE、1型糖尿病などでリスク増加が大きく、また若年発症の患者で相対リスクが高いことが報告されています。これらの結果は、慢性的な全身炎症 が動脈硬化を加速させ、従来の危険因子だけでは説明できない心血管リスク増大を招いている可能性を示唆しています。メタ解析の著者らも、「SIDs患者を心血管リスクの高いハイリスク群として認識し、適切なリスク層別化を行う必要がある」と結論づけています。
■女性の患者で顕著なリスク上昇 ─ その背景にあるものは?
今回のメタ解析では、興味深いことに患者の性別によって心血管死リスクへの影響が異なる可能性が示唆されました。具体的には、女性のSIDs患者では心血管死リスクの上昇が特に顕著であり、女性であること自体がリスクと疾患の関連性を強める要因になっていたのです。一方、患者の平均年齢や追跡期間の長さといった要因は、リスク推定に大きな修飾的影響を与えなかったと報告されています。
なぜ女性でリスク上昇が目立つのでしょうか。その背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、SIDsの中には女性患者が多い疾患が多いことが挙げられます。例えばRA患者の約7割は女性で、SLEに至っては患者の9割近くが女性です。これらの疾患では若い女性にも発症することがあり、通常であれば心疾患リスクが低いはずの年代の女性が高リスク群となってしまいます。実際、35~44歳という若い女性SLE患者では、同年代の一般女性と比べて心血管イベント発生率が約50倍にもなるとの報告があります。本来女性ホルモンの作用などで若年女性は心臓病になりにくい傾向がありますが、SLEのような激しい全身炎症があるとその「女性の強み」だった心血管保護効果が失われてしまうのです。その結果、男性と同程度かそれ以上に心臓病リスクが高まってしまうと考えられます。
さらに、女性特有の要因も指摘されています。例えばSLEでは妊娠や出産前後のホルモン変化が病態に影響を及ぼすことが知られており、こうしたホルモンの変動や自己抗体の存在が血管にダメージを与える可能性があります。また、一部の免疫疾患ではステロイドホルモン(副腎皮質ステロイド)などの治療薬を長期間使う場合があり、これが血糖値やコレステロールを悪化させ、動脈硬化のリスクを高めることも考えられます。特に女性ではステロイドによる骨粗鬆症や体重増加、糖代謝異常なども起こりやすく、生活の質への影響とともに心代謝リスク管理が難しいケースもあります。
重要なのは、女性だから特別に恐れる必要はないものの、「女性で若いから心臓は大丈夫」と油断してはいけないという点です。SIDsに罹患している女性(もちろん男性もですが)は、たとえ若年でも心臓のチェックや生活習慣の改善に積極的に取り組むことが大切だと、この研究結果は教えてくれます。その背景には、炎症と免疫の暴走が性差を超えて動脈硬化を促進するという医学的知見があり、男女問わず炎症のコントロールが心臓を守る鍵だといえるでしょう。
■心血管死の主因は「急性冠症候群」― 心筋梗塞など冠動脈のトラブルが大半
メタ解析では、SIDs患者の心血管死の具体的な原因内訳についても興味深いデータが示されました。対象研究の中で心血管死の原因が明確に評価されていた1,410例を解析したところ、なんとその91.6%が「急性冠症候群(ACS)」によるものであったと報告されたのです。急性冠症候群とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が急に詰まったり狭くなったりすることで起こる緊急事態の総称で、典型的には心筋梗塞や不安定狭心症が含まれます。平たく言えば、SIDs患者の心臓関連の死亡原因のほとんどは心筋梗塞などの冠動脈発作で占められていたということです。
この数字は非常に高率であり、一般集団における心血管死の内訳と比べても冠動脈疾患偏重であることが特徴的です。一般的に、心血管死には冠動脈疾患(心筋梗塞など)だけでなく脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心不全、動脈瘤破裂など様々な原因が含まれます。しかしSIDs患者では、脳卒中などよりも冠動脈の問題で亡くなるケースが圧倒的に多いというわけです。この背景には、SIDsによる慢性炎症が特に冠動脈の動脈硬化(プラーク形成)を促進し、プラークが破綻して心筋梗塞を引き起こす危険性が高まることが挙げられます。実際、デンマークの登録研究で冠動脈CT検査を受けた8.5万人超のデータを解析した報告でも、自己免疫疾患を持つ人は冠動脈にプラーク(コレステロールの塊)が存在する率が高く、石灰化の重症度も強いことが示されています。驚くべきことに、この研究では自己免疫疾患のある人は今後5年間の冠動脈疾患イベント(心筋梗塞や狭心症など)リスクが46%も高かったとされ、免疫疾患が冠動脈の病変と将来の心臓発作リスクに独立して関連することがわかりました。さらに興味深い点として、自己免疫疾患のある人では動脈硬化の危険因子(高血圧や高コレステロールなど)の管理状況によって心臓イベントのリスクが大きく左右されていました。具体的には、伝統的危険因子が良好にコントロールされていた患者群では、そうでない群に比べて心血管イベントリスクが約54%も低減していたのです。これは裏を返せば、どれほど免疫の病気自体があっても、血圧や脂質などをしっかり管理すれば心臓発作のリスクを半分近くに減らせる可能性を示しています。
以上の知見から、SIDs患者さんにおいて特に重要なのは、冠動脈疾患の予防と早期発見ということになります。心臓を栄養する動脈が急につまる心筋梗塞はしばしば突然死の原因ともなりえますので、胸の痛みや息切れなどの症状があれば早めに受診すること、そして普段から冠動脈を健康に保つ生活習慣(禁煙・食生活・適度な運動など)を心がけることが大切です。また、後述するように医療側でもリスクの高い患者には定期的な検査や予防的な治療を検討することが推奨されています。SIDsを抱えていても、適切な対策を講じることで「心臓のトラブル」を未然に防ぐことが可能なのです。
■心血管代謝ケアと早期予防の重要性 ─ 高リスク群への臨床的提言
SIDs患者における心血管リスク増大が明らかになった今、臨床現場で何をすべきかが次の課題です。専門家たちは口々に、心血管の予防ケアをこれら免疫疾患の管理に組み込む重要性を指摘しています。具体的には、心血管疾患の伝統的危険因子である高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙歴などについて、定期的なスクリーニング(検査)と積極的な介入を行うべきだという意見です。例えば欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインでは、関節リウマチ患者では少なくとも5年に1回は心血管リスク評価を実施することが推奨されています。また、リスクスコア算出の際には関節リウマチそのものがリスクを上乗せする要因となるため、結果に一定係数を掛けて補正する(実際のリスクを過小評価しないようにする)ことも提案されています。このように、リウマチや膠原病を専門とする医師(リウマチ科)と循環器専門医が連携して患者さんの心臓のケアにあたる体制づくりが各国で始まっています。
予防的介入としては、まず生活習慣の改善が基本です。SIDs患者さんは関節痛などから運動不足になりがちですが、無理のない範囲での定期的な運動は炎症を鎮める効果もあり心血管に有益です。食事面では塩分や動物性脂肪を控え、野菜や魚を多く取る心臓に優しい食習慣が勧められます。喫煙は論外で、禁煙は必須です。また、疾患によってはステロイド剤を減量できるよう病勢をコントロールすることも重要でしょう。主治医と相談しながら可能な範囲で免疫疾患自体の活動性を抑える治療(例えば生物学的製剤や免疫調整薬の活用)を行うことで、慢性炎症そのものを和らげ、動脈硬化の進行を遅らせる可能性があります。事実、近年では抗炎症薬で心血管イベントが減少しうることを示した試験結果(カナキヌマブという抗インターロイキン-1β抗体の試験など)も報告されており、「炎症を治療することが心臓を守る」という新たな予防戦略が注目されています。
もう一つ大切なのは、早期発見と早期治療です。SIDs患者さんでは、若いから大丈夫と見過ごされがちな異変にも注意が必要です。例えば「最近階段を上がると息切れがするようになった」「胸の圧迫感を感じることがある」「血圧が前より高くなってきた」など、心臓や血管にまつわるサインがあれば、ためらわず医師に相談しましょう。必要に応じて心電図や心エコー、負荷心電図、冠動脈CTなどで評価することで、狭心症やサイレント心筋虚血(症状の乏しい心筋への血流不足)を早期に発見できるかもしれません。特にSIDsの中でも高リスクと判明しているRAやSLEの患者さんは、主治医側も積極的に心臓の評価を検討しています。患者さん自身も「自分は心臓も注意が必要なのだ」と認識し、症状を我慢しないことが早期発見・早期治療につながります。
最後に強調したいのは、「心血管リスク予防はSIDs治療の一環」であるという考え方です。メタ解析の著者らも述べているように、SIDs患者を診る医療従事者は心臓病の予防対策もセットで管理する必要があるのです。具体的な対策は上述のとおり多岐にわたりますが、患者さん自身も含めたチーム医療で取り組むことが求められます。SIDsと上手に付き合いながら 「心も身体も守る」 ケアを実践していくことが、これからの臨床における大きなテーマと言えるでしょう。
■よくある質問(FAQ)
Q1. 全身性免疫介在性疾患(SIDs)とはどのような病気ですか?
全身性免疫介在性疾患(SIDs)とは、自己免疫または自己炎症の異常によって全身に慢性的な炎症が起こる病気の総称です。代表的なものに関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、血管炎症候群(例えばGPA〈多発血管炎性肉芽腫症〉や顕微鏡的多発血管炎)などがあります。これらの疾患では関節痛や皮疹、臓器障害など様々な症状が起こりますが、共通するのは体の免疫システムが自分の組織を誤って攻撃してしまうことで慢性的な炎症反応が続く点です。そのため英語ではImmune-Mediated Inflammatory Diseases(免疫介在性炎症疾患)とも呼ばれます。SIDsには、リウマチ専門医が扱う膠原病(こうげんびょう)や自己免疫疾患の多くが含まれますが、一部には潰瘍性大腸炎など消化管の自己炎症疾患も該当します。このようにSIDsは多彩ですが、慢性炎症が全身に影響を及ぼす点で共通しており、近年この慢性炎症が心臓や血管にも悪影響を与えることが問題視されています。
Q2. なぜ全身性免疫介在性疾患(SIDs)があると心血管疾患のリスクが高くなるのですか?
最大の原因は、慢性的な全身炎症です。体の中で常に炎症物質(サイトカインなど)が高い状態が続くと、血管の内側(内皮)にダメージを与え、動脈硬化(プラーク形成)を加速させます。本来、動脈硬化は高血圧・高コレステロール・喫煙などが原因でゆっくり進むものですが、SIDsではそれに加えて炎症という加速装置が働き、比較的若い年齢から血管が痛みやすくなります。さらに、SIDs患者さんでは免疫異常に伴うリスク因子もあります。例えばSLEや慢性関節リウマチでは不活発な生活習慣やステロイド治療の影響で糖尿病・高脂血症・肥満などが生じやすく、これもまた心血管リスクを上乗せします。また、自己免疫疾患ではしばしば特殊な自己抗体(抗リン脂質抗体など)が生じ、それが血液を固まりやすくして血栓(血のかたまり)を作り、心筋梗塞や脳梗塞を招くこともあります。総合すると、SIDsでは伝統的危険因子(高血圧・脂質異常・糖尿病・喫煙等)と疾患特有の因子(炎症・免疫異常・治療薬副作用等)の双方が絡み合い、結果として心臓や血管の病気のリスクを高めていると考えられます。実際、大規模研究でも従来の危険因子で補正してもSIDs患者のリスク上昇は消えないことが示され、炎症そのものが中核的役割を果たしていることが示唆されています。
Q3. 具体的に心血管リスクはどの程度高まるのですか?どの疾患で特に高いのですか?
全身性免疫介在性疾患(SIDs)全体としては、健常な人に比べて心血管疾患による死亡リスクが約1.26倍(+26%)になると報告されています。ただし、この数字はあくまで全SIDsの平均像です。疾患別に見ると差が大きく、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)では心血管死リスクがおよそ2~3倍と非常に高く、関節リウマチ(RA)では1.3~1.5倍程度、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)でも1.6倍前後と上昇が認められます。一方で、乾癬(尋常性乾癬)や炎症性腸疾患などでは一部の研究でリスク上昇が示唆されるものの、統計的に明確ではない場合もあり、今回のメタ解析では有意な関連とはなりませんでした。要するに、SIDsであれば何でも心臓に悪いというより、特定の疾患でリスク増大が顕著だといえます。その中でもSLE、RA、GPAの3つはメタ解析で有意差ありと確認された疾患で、臨床的にも注意が必要です。また、英国の大規模研究によれば、強皮症(全身性硬化症)や副腎疾患(アジソン病)、1型糖尿病なども含め、自己免疫疾患全般で心臓病リスクが平均1.5倍以上になるとのデータもあります。特に若くしてこれらを発症した患者では相対的なリスクが高く、「本来なら心臓病にならない年齢で心筋梗塞や狭心症が起きる」ケースが増えることが指摘されています。いずれにせよ、自分の病名と心血管リスクについて主治医からしっかり説明を受け、必要な対策を講じることが大切です。
Q4. 女性の方が心臓のリスクが高いというのは本当ですか?
はい、女性患者では相対的にリスクが高い傾向が報告されています。今回のメタ解析でも、女性であることがSIDsと心血管死リスクの関連を有意に強める要因となっていました。背景には、SIDsの多くが女性に好発すること、そして女性の若年例でも疾患によって心臓病が起こりやすくなることがあります。典型例がSLE(全身性エリテマトーデス)です。SLEは20~40代の女性に多い病気ですが、35~44歳の女性SLE患者では同年代の女性に比べ心血管イベント発症率が約50倍にもなるとの報告があります。通常、若い女性は心臓病リスクが極めて低い(男性や高齢者と比べ防御的)ですが、SLEのように全身に強い炎症があると若年女性でも動脈硬化が急速に進行してしまいます。その結果、本来リスクの低いはずの年代で心筋梗塞や脳卒中を発症するケースが増えるのです。また、関節リウマチなど他の疾患でも、女性では男性に比べて心血管リスク増加の影響が大きいとする研究があります。例えば関節リウマチ患者では男性より女性の方が予想よりも心血管イベントが多い傾向が指摘されており、これは女性ホルモンの減少や自己免疫反応の違い、治療介入の差などが関与している可能性があります。いずれにせよ、「女性だから安心」という先入観は捨てて、男女を問わずSIDs患者さんは心臓に注意を払うことが重要です。ただし、これは裏を返せば男性だから大丈夫というわけでもない点にも注意が必要です。男性SIDs患者も一般男性より心血管リスクは上がりますので、全てのSIDs患者が心臓リスク管理を意識することが望ましいでしょう。
Q5. 心血管リスクを減らすためにどんな予防策・ケアが有効ですか?
総合的な心血管代謝ケアが重要です。具体的には、まず生活習慣の改善があります。適度な有酸素運動やバランスの良い食事は炎症を抑え血管の健康を保つのに役立ちますし、禁煙は必須です。次に、定期的な健康チェックとスクリーニングです。血圧、血糖、コレステロールといった指標を定期的に測り、必要に応じて薬でコントロールします。例えばコレステロールが高ければスタチンなどの薬を用いることで、動脈硬化の進行を抑制し心臓発作を減らせる可能性があります。また高血圧の是正や糖尿病の管理も極めて大切です。SIDs患者では、こうした一般的な危険因子を管理することで心血管イベント発生率を大きく下げられることがデータで示されています。事実、自己免疫疾患のある患者群でも、危険因子がしっかり管理されていれば心臓イベントリスクが管理されていない場合より約半分にまで低減したという報告もあります。さらに、リウマチ専門医や循環器専門医と相談し、必要な検査(心電図や心エコー、冠動脈CTなど)を適宜受けることも有効です。欧州のガイドラインでは、リウマチ患者には5年ごとに心血管リスク評価を行うことを推奨しており、日本でもリウマチ膠原病診療の中で血圧や脂質のチェックを組み込む動きがあります。最後に、炎症そのものの制御も忘れてはなりません。SIDsの病状を安定させる治療(免疫抑制剤や生物学的製剤など)は、関節や皮膚だけでなく血管の炎症も抑える可能性があります。実際、近年は抗炎症薬によって心筋梗塞リスクを減らせることが示唆され、炎症を標的とした心臓病予防が研究されています。このように多角的なアプローチで「炎症を抑えて危険因子も抑える」ことが、SIDs患者さんの心臓を守る最善策と言えるでしょう。一人ひとりの病状に合わせて、主治医と相談しながらオーダーメイドの予防策を講じることが大切です。
参考文献
- Figliozzi S, Rojanathagoon T, Karogianni S, et al. The risk of cardiovascular death in systemic immune-mediated diseases: A systematic review and meta-analysis. American Journal of Preventive Cardiology. 2025;25:101366sciencedirect.comsciencedirect.com.
- Conrad N, Verbeke G, Molengerghs G, et al. Autoimmune diseases and cardiovascular risk: a population-based study on 19 autoimmune diseases and 12 cardiovascular diseases in 22 million individuals in the UK. Lancet. 2022;400(10354):733-743acc.orgacc.org.
- Mortensen MB, Jensen JM, Sand NP, et al. Association of Autoimmune Diseases With Coronary Atherosclerosis Severity and Ischemic Events. Journal of the American College of Cardiology. 2024;83(25):2643-2654acc.orgacc.org.
- Hammad SM, Harden OC, Wilson DA, et al. Plasma Sphingolipid Profile Associated With Subclinical Atherosclerosis and Clinical Disease Markers of SLE: Potential Predictive Value. Frontiers in Immunology. 2021;12:694318frontiersin.org.
- Weijers JM, Rongen-van Dartel SA, Hoevenaars DM, et al. Implementation of the EULAR cardiovascular risk management guideline in patients with rheumatoid arthritis: results of a successful collaboration between primary and secondary care. Annals of the Rheumatic Diseases. 2018;77(4):480-483scien
